人気ブログランキング | 話題のタグを見る

大阪府教育センター「教員研修」

昨年度も講師として参加した研修講座。今年は、「社会の変化等に対応した法教育及び金融・経済教育研修」として実施されました。

合計4回の研修のうち、前半2回は法教育の研修。
本日朝から夕方までで2回分こなします。

参加者は、中学校や高校の社会科の先生方。新任研も兼ねているので、若い先生方も多く参加されています。

日程は以下の通り。

(1)10:00~11:00 裁判傍聴
(2)11:15~12:30 講義・ワークショップ「学校段階における法教育のあり方」
(3)13:30~14:15 講義「裁判員制度について」
(4)14:15~14:45 模擬裁判DVD視聴
(5)15:00~15:45 評議(模擬裁判員裁判評議)
(6)15:45~16:30 研究協議・意見交換会「模擬裁判等の体験を通して」

「盛りだくさん」ですね。私は一日べったりこの日は先生方と「おつきあい」。(1)を拝聴し、(2)を私が主担し、(3)以降(5)迄を踏まえ、(6)で助言を行います。(3)~(5)は主として大阪弁護士会の先生方が担当されます。特に評議は班ごとに分かれますので、全4班全てに弁護士がつき、評議を進行します(最初弁護士の先生が一人足りず私が進行役をやらされるところでしたが;笑)。また、(1)・(2)は大阪地裁で、(3)以降は大阪弁護士会館での実施されました。

順番に見ていきましょう。
まずは(1)。私は「法教育」研究者でありながら、実は実際の裁判をこれまで見たことがありませんでした(苦笑)。今回初めて拝見しました。覚醒剤取締法違反の判決と、強姦・累計窃盗等の審理を。やはり生々しいですね。

(2)。私が主担当の講義・ワークショップ。今回の講義会場はは裁判員裁判が実施可能な大阪地裁の「大法廷」。こんな機会は二度と無いでしょう。下の画像は講義会場です。

大阪府教育センター「教員研修」_b0091443_19261652.jpg


(3)。大阪弁護士会のM弁護士から流ちょうな説明。私の講義の時もそうですが、今年は質問が良く出ます。時間早めに終わっても、質問で予定時間を超過。でもこのこと自体は良いことです。

(4)。大阪地検作成の「強盗致傷」を争う刑事事件のDVD。地検作成らしい?「検察側有利な事件」だなというのが私の印象。被告人の供述もあいまいで、被害者が持参していた紙幣にはホッチキス留めされたものがあったのだが、被告人もホッチキス留めされた紙幣をポケットに入れていたこと、ホッチキスの位置も被害者のものと一致する可能性が高いこと、被害者が見た犯人の服装は白い長袖シャツを着た男ということで、警察に職質された時点で同じような服装だったこと。。等々。私自身は検察側有利だと思いましたが。

(5)。評議では、「ホッチキス留めされた紙幣を持っている人は必ずいないとも限らない」(私はホッチキス留めされた紙幣を持っている人をこれまで見たことないのですが・・・)「被告人が多額の現金を持っていた理由は、借りたお金を返してもらったからというものだったが、お金を借りた人の名前を知らないとか本当にそんなことあるのか」(全くその通り!)「被害者が犯人の後ろ姿を見た時間帯は夕方だし、被害者はひったりにあったばかりで混乱し、犯人の様子を把握できるはずがない」(???)「犯行後、2キロ先で容疑者が確保されたが、犯行時間と容疑者確保の時間差を考えてみると2キロ先まで移動できるはずはない」(なるほど)等々、色んな意見が飛び交っていました。私自身納得できるもの、納得できないもの、新しい視点を提供してもらった意見もあり、評議の様子を興味深く聞かせていただきました。

(6)。評議の結果を、大阪弁護士会館にある「模擬裁判員裁判法廷」の裁判員席に座って、4つの班の代表者が評議の結果を報告。いずれの班も「無罪」でした。私は少数派でした(苦笑)。また、最後の意見交換では、「裁判員裁判に感情が入ることは許されないのか」「しょうがいを持つ人たちへの対応はどうなっているのか」といった質問が出されていました。私からは、「先生方がこの模擬裁判員裁判の評議を経験することを通して、裁判員制度の運用上の課題を掴んだり、裁判員制度の意義を知ることになったり、様々に理解が深まったはずだ。その理解を踏まえ、裁判員制度を批判的に考えることができる授業をこれから作る方法もある。なぜそういうことを言うかというと、裁判員になるための『裁判員養成教育』として法教育を捉えるのは狭すぎる見方だからだ。そもそも一生のうちに裁判員になる可能性なんてほとんどない。私が住んでいる福井だとましてや当たらないだろう。そんな当たらない可能性のある『裁判員養成教育』は法教育の学習論には含まれるが、あくまで傍流である。もっと市民として必要な『公正』『正義』感覚を身につけるための教育や、法が大切にしている価値・原則の教育、反省や批判の学習などを作って欲しい。(そうすることが社会をよりよいものにしていく市民形成につながるのだ!その際、模擬裁判はその方法であって、目的ではない。そのことの理解も大切だ!)」といった趣旨のことを述べました。

長い一日が終わり、先ほど福井に戻りました。明日は福井法教育研究会です。

********************************
そういえば、その福井法教育研究会の取り組みを取り上げた記事が読売新聞・教育ルネッサンスに取り上げられました(「法教育・法曹からの助言」)。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090723-OYT8T00258.htm

福井の附属中学校での学習「裁判員制度導入は裁判制度を身近にするか」の一環として行った模擬裁判を取材されたもの。また記事では福井法教育研究会の研究についても触れています。
by yasuhirohashimoto | 2009-07-24 19:26 | 教育のこと

福井大学教育学部の社会科教育学担当者が日々感じること、研究のことなどを気の赴くまま記しています。


by yasuhirohashimoto