教育実習・附属中学校研究授業(2009)

過日、附属中学校で教育実習生による研究授業が行われました。
今年、附属中学校で実習を受けている社会系の三年生は5名。
実習の最後に、実習生皆が協力して作成する研究授業は彼らの「集大成」といっても良いものです。
今年は、公民的分野のうち、「現代の行政」の箇所を授業しました。
この箇所では、「公務員の役割」「行政の肥大化」「規制緩和・行政改革」といった内容を取り扱います。

実習生の授業は以下のような5つの段階で展開しました。

(1)人生シュミレーションクイズを行う。
→政府に様々な要望(例えば、「高校でサッカー部に入部。レギュラー獲得のため一生懸命練習していたら、転んで骨折してしまった。手術代の医療費を国に全額出して欲しい」)を行う人がいて、その要望に賛成か反対かを問う。
→提示してある要望を実現しようとすると現在の人口ベースでどの程度のお金がかかるかをシュミレーションする。
→提示してある要望を実現しようとすると結果として「大きな政府」になることを提示する。

(2)「大きな政府」「小さな政府」の特徴を確認する。
→「大きな政府」に対して、一方で国民の要望は要望として、国として最小限の役割を果たそうとする場合結果として「小さな政府」になることを確認する。
→その際、それぞれの「政府」の現象面として「税金(例えば、『大きな政府』の場合は高くなるなど)」「サービス」「国民の要望」の観点から説明する。
→「大きな政府」の事例として北欧があり、「小さな政府」の事例としてアメリカ合衆国があることを提示する。

(3)日本は「大きな政府」か「小さな政府」なのか、考える。
→その際、日本の「借金」の多さに焦点を当てる。
→子どもの反応:「日本は様々な国民の要望に応えようとしているので『大きな政府』」「税金は比較的安いので、『小さな政府』」「わからない」など。また「借金」の多さに着目して発言として「『税金が安い』から借金が多くなっているのではないか?」「国民の要望が多すぎるのではないか」「政策的には『大きな政府』だけど、税金の面では『小さな政府』だから借金が多くなっている」など。

(4)国民にとって「大きな政府」と「小さな政府」、どちらが必要な政府だろうか?を考える。
→その際、「大きな政府」の事例としてスウェーデン、「小さな政府」の事例としてアメリカ合衆国を取り上げてそれぞれの事例に示される利点と問題点を考え発表する。

(5)これからの日本にとってどのような政府が必要なのか、考える。
→その際、「小さな政府」への流れを作る中で郵政民営化などがあったことを例示する。

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授業終了後の批評会では「(1)のクイズで示される金額の計算方法等を子どもが疑問に持つことがあるかもしれない、そのような疑問を授業展開では大切にしなければならない」「単元の目標のうち、『思考・判断』や『資料活用』の目標とこの授業はどのように対応していたのか、よくわからない」「説明の間、寝ていた生徒が(5)の段階で突然起き上がり、考え込むようになった。(5)の時間をもっとたくさんとるべきではなかったか」といった意見が出されました。

私からは、「(2)と(4)の内容に繰り返しがあり、(2)(3)(4)を整理すると、(5)をじっくり考える時間が確保できるのではないか。また、(5)の時間をたくさんとるためにも郵政民営化等の例示は必要なかった」といったことや、「そもそもの『大きな政府』『小さな政府』論は経済学習の流れの中で登場する概念なので、経済の論理が抜けていることに留意しないといけない」といったことを助言しました。

また「大きな政府」「小さな政府」のどちらかを考えるだけでなく、「小さな政府」を主張する子どもたちには「では警察や消防を政府の役割として限定しても良い?」といったような、「どの政策は国がやるべきでか?(どの政策は民間でやるべきか)その理由は何か?」といった発展した問いも考えられると思いました。
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今年の「中学校組」は、授業づくりに熱心で、この研究授業も連日深夜までかかって作成したとのことでした。授業全体の評価はクイズにしても、黒板に示す図表にしても、工夫の跡が見えました。そもそもこの「現代の行政」は授業づくりが難しい箇所だと思いますが、授業内容も含めよく頑張ったと思います。授業者のK君を始め、協力者の実習生諸君、ご苦労様でした。また、懇切丁寧に指導して下さった附属の先生方にお礼申し上げたいと思います。

中学校では、研究授業以外に、S君の細案授業しか拝見できませんでしたが、S君も堂々と授業を行っていたところに彼の成長を感じました。

皆さんそれぞれに成長したと思います。今後は教員採用試験の勉強をそろそろやっていきましょう。
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by yasuhirohashimoto | 2009-09-24 10:10 | 教育のこと | Comments(0)

福井大学教育学部の社会科教育学担当者が日々感じること、研究のことなどを気の赴くまま記しています。


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