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社会科教育研究の方法論の国際化プロジェクト・シンポジウム

過日、標記のシンポジウムに参加してきました。
全社学の国際化プロジェクトも本年で3年目。
今回は、日本の「授業研究」「評価研究」の方法論と米国の社会科教育研究方法論について、研究者が報告しました。

■日本の社会科授業研究方法論(渡部竜也氏)
→日本の社会科研究のうち、主として、歴史的な視座で、授業研究を類型化し整理したご発表でした。
→戦前の授業分析研究は「授業計画の一般定式化研究」であったのに対して、戦後は「授業分析の質的・臨床的研究」に重きが置かれるようになったこと。しかし、後者の研究は、教科の本質や教科の目標から問いかけ分析するといった点は捨象されている点が課題となったこと。一方、1955年以降は様々な授業構成原理が提示され、また、海外の授業研究方法も採り上げられながら、その応用が試みられるようになってきた。。などなど、詳細はそのうち、論文になるでしょうから、そちらを参照してください。

■日本の社会科評価研究の方法論(藤本将人氏)
→日本の社会科評価研究における研究方法論を代表的な論文の構成を分析する中で、4類型(研究の目的としての「数的手法に基づく評価技術の向上」「社会認識形成論に基づく認識の抽出」、研究の視点としての「測定/査定」「価値づけ」、それぞれの組み合わせ)にまとめ、より社会科固有の評価論を示す研究方法は何か(目的としての「認識の抽出」方法としての「価値付け」)について仮説的に示したご報告でした。今までにない研究発表でしたので刺激を受けました。ただ若干縦軸(「研究の目的」)の類型に疑問を感じましたが。

■米国の社会科教育研究の方法論(小川正人氏)
→米国の社会科研究方法論に関する議論は1980年代から1990年代にかけて活発に行われたこと。近年はこの議論が「封印」されていること。その理由は、量的研究の正当性についての疑問や、量的研究と質的研究議論の無意味さ、社会科教育研究自体の多様化にあること。米国の現在の傾向は、質的研究技法を用いた実践研究が主流であることなどなどについて、ご報告がありました。

「指定討論者」の広島大学:草原和博先生より、各氏に質問が出され、その回答を終える頃には、終了の時間。とても盛会で、私も勉強になりました。全社学が東京で行うシンポとしては、これまでで最高?の来場者数だったのではないでしょうか。今後も年数回ペースでこのようなシンポが行われる予定です。来年中頃には私も「まな板の鯉」になる予定です。

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シンポジウムの前日は、今年度から始まる「社会科教育研究・実践の改善に資する研究法ハンドブックの日米共同開発」科研の打合会。先述したように、今後年3回ペースで、各会、アメリカの社会科教育研究者お一人が講演をし、日本の社会科教育研究者2名が報告をするシンポジウムを予定しています。日本の研究者は、「実践プランニング研究」「カリキュラム研究」等々、「研究領域」に対応した形で、日本と米国の研究方法論について比較・吟味し、その内容を報告していくことになります。なかなか大変な作業になりますが、私なりに何とか頑張っていきたいと思っています。
by yasuhirohashimoto | 2010-06-08 13:33 | 研究のこと

福井大学教育学部の社会科教育学担当者が日々感じること、研究のことなどを気の赴くまま記しています。


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