人気ブログランキング | 話題のタグを見る

松原市三中校区合同授業研究会(2011)。

過日、標記の授業研究会があり、参加してきました。

第1部 研究授業(午後1:45~2:30)
算数:文章題(図を使って、考えよう) 多胡陽子、池西優子(1-3)
特活:上手な断り方 清水裕美(4-2)
道徳:競合する責任について 中川毅(5-3)

第2部 研究協議(午後2:40~3:50)

学力:算数の授業検討他 指導助言 松原市教育委員会指導主事 稲垣久代先生
人権関係づくり:特活の授業検討他 指導助言 武庫川女子大学教授 西井克泰先生
人権の知的理解学習:道徳の授業検討他 指導助言 船岡浩弁護士、橋本

第3部 全体会(午後4:00~5:00)

・開会挨拶
・分科会報告
・ワーキング活動の報告
・まとめ(助言者)
・閉会の挨拶

***********************************************
私が拝見したのは、「競合する責任」の授業です。

あるサッカークラブに通っているケンジ君がキャプテンになり、チームを率いる
ことになっていた。連日練習を行い、エースでもあるケンジ君も張り切っていた。
しかし、お兄さんが仕事の都合で海外に出張に出ることになり、また、お兄さん
に会って品物を渡す約束をしていたが、その日が試合の日と重なっていた。ど
ちらを優先すべきか、といった課題設定。

ツールは「果たさなければどうなるか」を位置付けています。
そして、「問題を整理する」ために、①「チームメイトとの約束」②「お兄さんとの約束」
は何か、③「チームメイトとの約束を選ばなかった場合はどうなるか」④「お兄さんとの
約束を選ばなかったらどうなるか」を考えさせ、結局「あなたはどちらを選びますか」、
と問い、その理由を児童に書かせていきます。

授業では、③で「友達からの信頼がなくなる」や「チームメイトが勝とうと思っているのに
負ける可能性がある」などが児童から提示されました。「責任を果たさなかった場合のコスト」
に焦点を当てた答えですし、後者については、あくまで「可能性」を問うているので、あくまで
「可能性」であることを認識させる必要がありました(これについては、中川先生も強調され
ていました)。また①、②、③、④と比較的スムーズに進んだのですが、結局子どもの思考は、
「チームに迷惑がかからないで、お兄さんに会える方法は何かないのか」に焦点化されてしまい、
「試合前日にお兄さんに会えないのか」「会えなかったとしても、渡すべきものを郵送すれば良い
ではないか」といった意見が多く出されて、時間切れ。

批評会でも意見が出ましたが、果たしてツールが適切だったのかは疑問が残ります。「果たさなければ
どうなるか」だけではなく、ツールは「判断の基準」を示すものなので、この場合、「誰の誰に対する損害
なのか」「どのような損害なのか」「損害が大きいのはどちらか」を段階を追って考えていく必要があった
のではないか、また、事実を確定させていく必要もあるので、「渡すべきものとは何か」(この問いは損害
の大きさを測る上で必要になるので重要だと思います)といった問いが子どもから自然に出てくれば、そ
れを尊重すれば良かったのではないか(実は授業の中でこの問いをささやいた児童がいたのです)。

松原市三中校区合同授業研究会(2011)。_b0091443_9585861.jpg


私からは特に、分科会・全体会で、今後の三中校区での「法教育」実践の課題として、「新学習指導要領『法教育』との関連づけ」「義務段階を卒業するまでに身につけておいて欲しい法的市民性を明確にし、それを育成するための小・中連携を行うように整理し直すこと」「『授業と評価の一体化』を考えた時に必要になる『法教育』の評価手法の確立」「限界に焦点を当てた授業づくり」などを挙げました。特に三つ目の課題は、今後研究していく必要のある必須項目だと思います。
by yasuhirohashimoto | 2011-11-23 12:00 | 研究のこと

福井大学教育学部の社会科教育学担当者が日々感じること、研究のことなどを気の赴くまま記しています。


by yasuhirohashimoto