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附属中学校公開授業(2012)。

本学では例年6月に公開授業研究会があり、この公開授業研究会に向けた「事前研究会」が5月、そして、1月に「公開授業」が行われます。

今回は新学習指導要領でも課題になっている地理的分野の「アフリカ州」を取り扱った授業でした。
拝見した授業は、「アフリカ州」を学ぶ上での「導入」に当たる授業。

「アフリカ州」のイメージを班毎で話合った結果を示し、その後で、「アフリカは本当に生活水準が低くて貧しい国が多いのか」を問います。①貧困の要因を書いた6枚のカード(「学校に通えない」「栄養失調」「失業」「仕事に必要な技能がない」「防げる病気で命を失う」「衣食住など生活に必要なものを満たす収入がない」)をもとに、相互の因果関係を考えさせる。そして、②何をもって「生活水準」を測るのかを問い、生活水準は経済的なものだけでなく、文化や健康レベルでも考える必要があることを示す。そして、③国連が提唱する人間開発指数を紹介し、主題図を読み取らせることで、単元を貫く問い「サハラより南のアフリカは北に比べて、なぜ生活水準が低くて貧しい国が多いのか」につなげていくといった内容でした。

批評会では、①②③の学習活動の「つながり」がすっきりしないことや、②の内容を具体的に把握(確認)する時間がなかったこと、内容が盛りだくさんであったこと、①の学習をじっくり時間をかけてやるべきだったのではないかということ、そもそもアフリカが貧困であるというのはステレオタイプでその考えを打ち壊すような授業が必要なのではといったことなどが示されました。

今回の提案授業は、いくつか課題はあったと思います。子供から遠い「アフリカ州」、子供が学ぶ意義を感じにくい「アフリカ州」を学ぶ意義をどう子供に伝えるのか、「導入」の時間はそのことに時間を割く必要もあります。ある教科書では、アフリカ州で作られているバラが日本に輸入されており、日本とアフリカ州との関係を読解できる「記事」もありました。参考になるのではと思います。

また、今回は、単元全体の作り方について評価できたと思いました。単元を貫く問いと対応した「知識の構造図」が示されていたのです。子供の認識がどこまで至ったら、良い授業と評価できるのか、その「評価基準」が例示されていたことは本学附属中学校の授業が一歩前進したことを示していると思います。とかく極端な「学びの共同体」で授業を組んできて、子供のレベルで這い回り、何も新しい知見を学ぶことなく50分を過ごしてきた子供たちにとって、どの知識レベルに到達すれば、授業が成功したのか、その知識レベルに到達するにはどのような手立てが必要かを教師が考える上で、「知識の構造図」はきっと有効です。

福井県の先生方はこれまで「岩田理論」を学び、比較的良好な授業を展開してきたと思います。この伝統を上手く生かし、そして発展的な学習が構想できればと思っています。
by yasuhirohashimoto | 2012-01-23 00:00 | 研究のこと

福井大学教育学部の社会科教育学担当者が日々感じること、研究のことなどを気の赴くまま記しています。


by yasuhirohashimoto