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お茶の水女子大学附属小学校研究大会(201202)。

過日、お茶の水女子大学附属小学校の研究大会が二日間にわたって開催されました。
ここ数年毎年参加してきましたが、昨年度は公務多忙で参加できませんでした。
ですので、2年ぶりに茗荷谷の学校を訪れました。

同小学校の「市民科」は全国的にも有名です。今回はO先生の授業を中心にレポート
したいと思います。

今回の授業テーマは、「わたしたちのくらしと災害-首都直下型地震が起きたときの
お茶の水女子大学の役割-」です。

授業(一日目)では、まず「3.11」の日に、お茶の水女子大学は4名の帰宅困難者を受け入
れたが、その方々はすぐに大学を出て行ったことが提示されます。一方で青山学院大学は、
8000人の帰宅困難者を受け入れたことが示されます。ここで子どもはお茶の水女子大学に
対して「批判的な意見」を持つようになります。しかし、帰宅困難者をたくさん受け入れたとして
も、十分な食料があったのか否か、疑問を持つ子供も出てきました。十分な食料があったのか
否かは次時に調べるとして、その後、他の女子大学の中には開放していない大学があり、「女子
大学としての特殊性:女性の安全性」を認識させます。また、当日附属小学校の子どもたちも多く
が教室に残っており、教員は、子どもたちへの「対応」などで帰宅困難者への対応が難しい状況
であったことが確認されます。この辺りから、子どもがジレンマを感じるようになり、最後、お茶の
水女子大学の教師間の会話として、「直下型地震が起こったら、『3.11』の二倍の帰宅困難者
が出てくる」、「子どもたちへのケアだけで、帰宅困難者に十分対応できない」「「体育館にはトイ
レがなく、子どもたちがいる校舎へ見ず知らずの人たちが入ることになる」などがO先生より朗読
され、子どもたちにどの言い分に納得するか、帰宅困難者の受け入れについてさらに考えさせて
いくといった流れでした。

授業(二日目)では、上記の疑問(十分な食料があったのか否か)について、既に提示されており、
その内容は、中学校は1食分、小・高校もそう多くない(何食分かは記録していません)状況があり、
その中で、帰宅困難者を重視すべきか、お茶の水の小学生を重視すべきかが問われます。
子どもたちからは「食料を増やせばよい」「休憩程度なら良い」「食料を増やす場合は、お金がかかる」
といった意見が出され、「食料を増やせばそれで良い」という意見に子どもたちの考えは傾きます。
また、この時点で直下型地震の時には、水・食料、三日分必要ということが示され、子どもたちも
「三日分準備すれば良い」と「合意形成」できていたように思えます。そして、O先生から、「食料
の問題以外でどのような問題があるのか」が提示され、子どもたちから、「毛布が足りない」
「赤ちゃんがいる場合、ミルクが足りない」「アレルギー対応」などなど、子どもらしい意見が
示され、最後に、前述の教師間の会話が示されました。

O先生にお話を伺っていないのですが、授業の一日目と二日目は別々のクラスでしたので、
授業の進め方を異ならせているのではと思います。

授業(二日目)については、ジレンマと言いながら、両者の折衷案が子どもの間で「合意形成」
されているので、むしろ、帰宅困難者を受け入れる場合の「条件」を考えさせる方が良いのでは、
といった意見が出されました。

私自身の感想は、「価値対立」を起こす場合、明確な対立関係を持ち込む必要があるということ
です。一日目の授業は、「子どもレベル」の対立が明確になっており、それこそ子どもたちがジレ
ンマに感じていて、「成功」だったのでは、と思ったのですが、二日目の授業を拝見すると、より高
次な価値対立レベルでは、帰宅困難者の「生命」も、附属小学校の子どもたちの「生命」も両者と
も大切なものなので(「生命尊重」)、どちらを重視するかは考えられず、両方大切であるといった
考えの基で、どうやったら帰宅困難者を受け入れられるのかの条件を考える段階に至ったのでは
と思います。

明確な価値対立の構造をもった「二項対立」の授業が必要なのではと思いました。

年々、ソフィスティケイトされていくお茶の水の授業、今年も勉強になりました。
by yasuhirohashimoto | 2012-03-08 00:00 | 研究のこと

福井大学教育学部の社会科教育学担当者が日々感じること、研究のことなどを気の赴くまま記しています。


by yasuhirohashimoto