熊本弁護士会法教育委員会参加、回顧。

過日、標記の委員会に「飛び入り参加」してきました。
熊本はあまり知られていない?ですが、弁護士会、熊本大学、
学校現場との連携で「法教育」研究を進めている数少ない県。

熊本大学のF先生から、熊本での取り組みについて話には聞いて
いましたので、そのうち時間が取れたら熊本へ伺おうと思っていました。

このたび、橋本の熊本入りと合わせて委員会日程を変更頂くこと
ができ、会に参加(変更して頂いてありがとうございます)。

委員会では、以下の取り組みについてご報告がありました。

1.人権教育としての「法教育」の取り組み 中学校教諭N先生・大学教員F先生

大きな授業の流れは以下の通りです。

①法律に基づく「大人」と「子ども」の違い、様々な事柄について
「年齢制限」があるのはなぜかについて考察し、「意思能力、行為
能力、責任能力」などの「能力」による区分があることを確認する。
②少年法の理念を理解する(少年は今後成長が期待される存在、
失敗をバネに成長できる存在として位置付けられていること)。
③軽微な少年事件に対する処罰を子どもたちに判断させること
を通して裁判官や調査官は「少年の更生可能性」「成長の可能
性」などを踏まえていることを体験的に理解させる。
④「成長が期待される」少年院の子どもたちの作文を読むことを
通して、成長を望む周囲の期待や成長を信じる自分の信念が日
々の何気ない生活を豊かにしている場合があるといったことに気
付かせる。
②・③については、家裁の裁判官を長年経験された弁護士の先生
が授業に入り、TTを行ったものです。

人権教育での取り組み、といったところが新鮮でしょうか。
道徳教育やセルフエスティームを狙った授業として組織する
ことも可能だと思いました。また、F先生が、「家裁の裁判官の
先生がどのようなことを考えて判断を下すのか、書籍では分か
らない、実体験に基づく話なので、非常に参考になった」とおっしゃ
たのが印象的でした。

2.小学校での「法教育」の取り組み 小学校教員I先生
I先生による実践は以前からよく承知していたのですが、最近は、
道徳教育の研究会などでもご発表されているようです。ご発表頂いた
実践には熊本大学の法哲学の先生との協働授業など、面白い取り組
みが複数あります。本ブログでは、「チリの落盤事故」を事例にした授業を
取り上げて、①「生命とルール」②「生命とのつながり」を考えるといったこ
とを狙いとした授業についてご報告します。「チリの落盤事故」では、避難
所にあった食料がマグロの缶詰と水が少しだったことはあまり知られてい
ないかもしれません。このような話題を取り上げて、いつ地上に出られるか
わからない切迫した状況の中で、作業員33名全員が生き残るための食料
の分配はどうするべきか、といったことを考える「総合的な学習の時間」の
授業でした。児童には「一律平等」感覚が蔓延していますので、当初は
「一律平等」意見があったようですが、徐々に年齢や体調など個々の事情
を考慮するような考えを出し始め、議論を続きます。次時では、「どうやって
食料分配のルールを決めたのか」を問い、リーダーが決めるのか、全員で
徹底的に話合うのか、多数決で決めていいのか悪いのか、といった手続き
面を考慮する授業になっています。また最初の脱出する人を誰にするのか
といったことも子どもたちの間で議論させていきます。

この授業は、最終的に、在チリ大使館にお手紙を出すといった流れになる
のですが、実際に在チリ日本大使がわざわざこの小学校に来られるという
ハプニングもあった授業だそうです。子どもの想い出に残る授業になったの
ではと思います。

「対立と合意、効率と公正」の「習得」の教材にも適していると思いました。
I先生の熱心な取り組みには頭が下がります。

3.小・中学校における弁護士会の取り組み
小学生部会は「弁護士と憲法を学ぼう!」という授業、ルールの決め方や
基本的人権の内容について、小学生にも対応可能な授業が報告されました。
中学生部会では、ルールの「基本原則」、遡及処罰の禁止や平等性など
について、寸劇を用いた授業が報告されました。

小学生部会は憲法を真っ正面に捉えて授業されていましたし(あまりないパターン)、
中学生部会は、現場教員にとって教えにくい「手続き」をわかりやすく教えてくれる
授業になっていたと思いました。

前から思っていたことですが、もっと熊本は注目されて良いですのが。
引き続き、熊本の展開にも関心をもっていきたいと思います。

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終了後は、地元料理の美味しい店で懇親会。
馬刺しに辛子レンコンと、地元料理で満たされました。

このような機会を準備頂いた諸先生方、ありがとうございました。
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by yasuhirohashimoto | 2012-04-07 00:00 | 研究のこと | Comments(0)

福井大学教育学部の社会科教育学担当者が日々感じること、研究のことなどを気の赴くまま記しています。


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