法に関する教育・教材開発研究会、シンポジウム回顧

さて、シンポジウムの回顧を。

基調講演の大杉先生からは、「法教育」特に、新学習指導要領に導入されることになった背景に
ついてコンピテンシー論を引用し説明されました。また、現代社会の見方や考え方の基礎として
の「対立と合意、効率と公正」、現代社会を捉える枠組みとしての「幸福、正義、公正」の考え方、
「法教育」を実践していく上での課題として、「教師が答えを一つ持って授業を組む」という基本的
な授業スタイルとは異なる「構成主義的授業観」が「法教育」の一つの柱なので、それにとまどう
教員が多数いる、といった点をどう克服するのか、などについてお話頂きました。

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その後で、「幸福、正義、公正」の習得の授業プランを桑原先生から、「幸福、正義、公正」の活
用の授業プランを吉村先生から、「幸福、正義、公正」「対立と合意、効率と公正」の活用の授業
プランを中原先生からご提案頂きました。

桑原先生の授業は、橋本も以前授業化したアメリカ合衆国の性犯罪者のプライバシーを侵害する
「メーガン法」を扱ったものです。吉村先生からは「派遣労働規制」の法制度を他国の法制度と比較
して検討していく、橋本の「法学習類型」では「法批判学習」に位置付けられるもの、そして、中原先
生からは、トリアージを扱った授業、ネタとして使えると思いました(大杉先生が最近執筆された論文
にもトリアージが取り上げられています)。

後半、指定討論の中川先生からは、「効率と公正」について効用フロンティアを活用して、効率が達成
された状況の中で公正といった価値観を選択するといったこと、功利主義的な価値観を選択するのか、
ロールズ的な価値観を選択するのか、いずれにしても、効率が達成される状況の中での選択について
経済学的にお話頂きました。土井先生からは、ご自身も学習指導要領現代社会の作成にご尽力された
たご経験から、「幸福、正義、公正」についてその捉え方に基盤にお話頂きました。司会の吉田先生から
は、生徒の切実性の話など、ご提案頂いた授業3つについてご意見頂きました。

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今回のシンポジウムの「首謀者」である橋本から最後に一言。

授業の立案については、これまで3回の研究会を行ってきました。その経過の中で、三者三様、それで
良い、と途中で思うようになりました。今回は「対立と合意、効率と公正」「幸福、正義、公正」の授業を作
っていく上でどのような課題があるのか、授業作成者としての課題も想定されますので。それも明らかに
すれば良い、と思うようになりました。

結果として、「効率と公正」「幸福、正義、公正」の捉え方が三者三様になった。ということです。
学習指導要領的には「効率と公正」は中川先生のご説明に近いもの、授業のプランニングとしては、「効率
が達成された後での公正問題」として議論していくことになるのですが。そうした時に、現代社会の諸課題
について「効率と公正」を活用することを想定している中学社会(公民的分野)では、効率が達成されない
状況を探す、、そして中学生の授業として適切な課題を探す、その場合、限られた教材になり、教材開発
の幅が拡がらない危険性があります。活用場面では、「対立と合意、効率と公正」、4つの概念的枠組み、
全てを活用するということではない、その中の三つを取り上げるといった授業プランもあってもよいでしょう。

「幸福、正義、公正」については、実は過日大学院の共通授業で「問題解決リテラシーとしての法的リテラシー育成の理論と方法」というテーマでお話したのですが、その際、「法的リテラシー育成にもつながる幸
福、正義、公正の考え方が現代社会に取り入れられた」旨、説明しました。講義の後の質問で、現職の先生?から、「トゥールミン図式のバッキングに当たる箇所に法規範が入って、根拠付けるのは、納得できる
が、社会全体の幸福、個人の幸福がバッキングに入るのはどうなのか」、つまり、「社会全体の幸福」なん
てのは曖昧でよくわからん、といった趣旨のご質問でした。習得場面は、「生命、情報、環境」がテーマに
なりますので、環境を扱うときに出てくるのが「社会全体の幸福」なのでしょうが、これも授業構成上の課
題だと思います。

「幸福、正義、公正」(「対立と合意、効率と公正」もですが)については、更に検討が必要です。引き続き、
どこかの場面で出来ればと思います。
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by yasuhirohashimoto | 2012-06-29 00:00 | 研究のこと | Comments(0)

福井大学教育学部の社会科教育学担当者が日々感じること、研究のことなどを気の赴くまま記しています。


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