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大阪府松原市中央小学校④

今日は過日行われた、公開授業研究会のうち、6年生の授業について報告します。

■6年生「わたしたちの権利・あなたの権利-みんなの権利を大切にして身近なトラブルを解決しよう」

 この授業は、架空のたじひ町で起こった「コンビニエンスストアー建設問題」についてコンビニ建設賛成派と反対派に分かれて議論し、論点を整理した後で、よりよい解決策を模索するといったプロセスで組織されています。この授業で提示される賛成派・反対派の主張は以下の通りです。

▲主張
○お年寄り代表・うめこさん(歩いて15分もかかるスーパーに行くことが難しい。コンビニが近くに出来れば安心だ)
○コンビニ店長・つよしさん(土地を手に入れてようやく店を建てることができた。ここなら競争店も少なく、成功できると考えたのです。今更建てるなと言われても困ります)
○たじひ町会長・まもるさん(この辺りは周りに店もなく街灯もなくて夜は暗くて危険だった。コンビニが出来れば人通りも多くなるし、さびしかった町もにぎわうだろう)

●たじひ町小学校児童会長・きよしくん(小学校の近くにコンビニが建ったら、帰り道に買い食いする子が出てくる。またお酒やたばこも販売しており子どもに悪影響がある)
●近所の人・せつこさん(24時間営業で、深夜に人が集まるとうるさくて寝られません。その上、食べたゴミなどが散らかされたり、周りの環境も悪くなる)
●駄菓子屋さん・ちよこさん(コンビニが出来ると、こどもはそちらに流れる。そうすれば細々とやってきたこの店もつぶれてしまう。その後、どうすればよいのか)

このような登場人物の持つ「権利」(侵害)について確認した後で、それぞれの持つ権利(侵害)の「調整」の結果、どのような政策が望ましいのが意思決定させるといった授業になります。

***

批評会では私の方から以下のコメントを出しました。

□問題が複雑になりすぎている。また子どもの意思決定が教師の予想外の方向に向かう可能性がある。
→焦点を絞って、意思決定させたり、この問題を取り上げる場合でも答えを教師の方でいくつか用意し、その答えを子どもが選ぶ理由を問う等して、問題の解決に一定の「しばり」を設ける必要がある。

□これらの主張をすべて「権利」主張として正当化できるのか。また「権利」主張をする場合の軽重を子どもに判断させるよう(意識させるよう)授業を組織する必要がある。
→「権利」にはその問題状況下において、どの権利を重視するべきかが問われることとなり、その点を授業の折りに強調する必要があること。すなわち、この授業の目的の一つに、「権利」と「権利」が葛藤する場面があり、その「調整」で社会が成り立っていることを理解させることがあるので、前述の点を意識して授業が組まれる必要があること。

批評会では、「ロールプレイを授業の中でどのように位置づけるのか」といった議論もなされました。ロールプレイで最終的な意思決定まで行わせる場合とロールプレイをあくまでも問題状況を把握するための手段として考える場合、どちらが良いのかといった議論です。授業のねらいをどこに置くのかで前者になるのか後者になるのかが変わってくるでしょう。

 また、この問題はコンビニの建設前の設定になっていますが、コンビニ建設後に例えば夜中に騒音がなってうるさいといった状況にした方が「確定した事実」で議論が進むこととなります。その場合、コンビニ建設後の24時間営業の是非などに問題設定を変えることになりますが。

 これまで同小学校では取り組んだことのない授業設計ですので、子どもも慣れておらず、先生方も大変ご苦労されています。今月末には研究発表会が控えています。出来る限り、助力していきたいと考えています。
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by yasuhirohashimoto | 2006-11-17 10:50 | 研究のこと

福井大学教育学部の社会科教育学担当者が日々感じること、研究のことなどを気の赴くまま記しています。


by yasuhirohashimoto