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大阪教育大学附属天王寺中・高等学校研究集会。

過日見出しの研究大会が開催されました(と言っても、2月だったのですが・・・)。

今年度は「社会参画力を育成する法教育」をテーマに掲げるということもあって、
私の「出番」。講師と指導助言を依頼されました。

同校は、以前、日弁連が主催する「高等学校模擬裁判選手権」の第1回出場校。
出場の際に、生徒の指導に関わってこられた先生を中心に今回のテーマを発案したようです。

午前中は2つの「公開授業」

①高校1年生を対象にした「政治・経済」の授業では、

A子がブログに本人の了解なく写真を掲載したせいで、写真を写された日にBが、
部活の練習をサボったことが、ブログを見た先輩に「ばれ」てしまい、その先輩に、
Bはこっぴどくおこられた。

という「紛争」を取り上げて、A子の「言い分」やBの「言い分」について、表現の自由や、著作権、
肖像権を根拠として主張を作り上げていくというもの。そして、この紛争の解決を考える際に、
当事者の責任や利益について考察させるといった内容。

この場合、A子がBの写真を掲載することが予想できたかどうか、
また、そもそも写真を掲載することが個人の利益を大幅に侵害するものだったのかどうか、
公序良俗に反するものだったのかが論点になるとのこと(参会されていた弁護士の先生談)

子どもたちの議論は、「Bがさぼったことが悪い」に集中しがち。両方の立場が正当化できる
問題設定が良かったのかもしれません。

また問題の解決策としては、「ブログにパスワードをつける」「画像を編集する(ぼかしを入れる)」
といった比較的肖像権を尊重する判断が子どもたちから提示されました。

やはり表現の自由や肖像権、著作権の「比較考量」をどう考えるのか。判断の基準を子どもたちに
理解させ、その判断基準だけで解決できないような問題を設定するといった授業も面白い授業に
なるのではないでしょうか。

②中学校3年生を対象にした「社会科公民的分野」の授業では、

ある中学校で、掃除をいつもさぼり、まじめにしないCと、クラスメイトのDが掃除時間中に「ちゃんばらごっこ」を始め、それを注意したEが、Cからほうきを取り上げたが、Eがほうきを取り返し、振り回していたとこころ、ほうきの柄がガラスに当たり、ガラスが壊れDがけがをした。

という「紛争」を取り上げて、C~Eの立場の主張を子どもたちに提案させた後で、何が問題だったのかを考察させ、クラスのルールを作っていくといった授業。

クラスのルールとして提案されたものは、「掃除をまじめにしない子がいることが問題である」と子どもたちは判断し、「班を作り、掃除をさぼった者が一人でもいれば連帯責任」「サボった者がいれば、班のメンバーの監視の下で翌日さぼった者だけで掃除させる」といった「連帯責任」論が多く出され、「みんなで協力し合って注意する声を高める」というものもありました。

さすがに「連帯責任」論は前近代的ですねえ。

またこの授業については、「社会科の授業」というよりは「道徳の授業」ではないかといった声が授業検討の際にフロアーから上がりました。問題は子どもたちに身近で良かったのですが、問題の内容を少し変える必要があったのでしょう。高校の「政治・経済」の授業のように「憲法や法を使う」といった授業づくりを目指せば、社会科授業として組織できたのではないでしょうか。

いずれも「紛争」を合理的に解決する力=社会参画力と位置づけ、授業を実施しました。今までにないとても新鮮な実践だったと思いました。

午後からは授業の批評会と、私の方から「新学習指導要領で求められる『法教育』」についてお話をしました。
参会者も50名超と例年と比べて多かったようです。わざわざ関東からもお見えになっていた方もおられましたし。今後の研究の進展に期待しています。

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今日は本学は入学式。これから大学院新入生のオリエンテーションに出ないといけません。
いよいよ、本年度も本格始動です。
by yasuhirohashimoto | 2009-04-08 13:38 | 研究のこと

福井大学教育学部の社会科教育学担当者が日々感じること、研究のことなどを気の赴くまま記しています。


by yasuhirohashimoto