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福井農林高校・公開授業(2011)。


過日、NIEと学力向上に関する公開授業が福井農林高校で開催されました。
私も指導助言を依頼されていたので、授業を拝見しました。

授業では、「無料サイト提訴問題」が取り上げられました。
皆さんもご存じかもしれませんが、youtubeの動画ダウンロードを可能にする
サイトが登場し、このサイトの「影響」で著作権が侵害されたと主張する音楽業界が
賠償を求めて提訴を行いました。

この「無料サイト提訴問題」について、その解決策を生徒に考えさせ、
ダイヤモンドランキングでその解決策の有効性の高い順に序列化し、
生徒個々の序列化の「妥当性」についてグループで検討するのが本授業
のあらまし。

生徒から提示された「有効な行動」としては、「A案 CMで違法ダウンロード
の禁止をよびかける」「B案 授業のなかで情報モラルの教育を徹底する」
「C案 法律で違法ダウンロードのサイトを厳しく規制する」「D案 違法サイトの
場合は『違法サイトです』と掲示する」「E案 ダウンロードを廃止にして、ビデオなど
を直接購入するようにする」「F案 ダウンロードできるサイトは、全て有料の会員登録
制にする」でした。

グループに分かれた生徒たちは、主として、C案とF案を上位に置いて、他にE案を
上位に置くグループもありました。この「提案」をまとめて次回の授業で更にC案と
F案の「有効性」などを吟味することになります。

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批評会では、「A案~F案を選んだ『基準』は何か」「「C案とF案に偏る可能性について
(授業者は)どう考えていたのか」「価値観を明確にし、それを吟味することが目的だった
が、実際は選択肢の有効性の吟味で終わっていたのではないか」「新聞は導入のみ
で取り上げられていたので、NIEの授業として改善の余地があるのではないか」
「A案~F案で提示された選択肢の背景にあるのは、法を重視するのか、モラルを
重視するのか、といった点だが、そこを授業の中で強調すべきではないか」
「法とモラルの対立では弱いのではないか、価値観の対立と十分に言えるのか」
「合意を作り上げていく過程がこの授業のポイントになるはずで、その過程が見えづらい、
授業を展開する上でその過程が明らかになるような工夫(判断基準の提示)が必要
なのではないか」などなど、たくさんの意見が諸先生方から示されました。

私が言いたかったことは、上記にある「価値観の明確化から価値観の対立とその
調整を図る場合の授業づくりはこれまで社会科でも行われており、その授業づくり
の工夫を先達から学ぶ必要がある。その場合、合意形成に至る上で、判断基準
の提示(判断する上での「ものさし」)が重要になるが、この授業テーマでどの程度
の判断基準が示しうるのか考える必要がある。テーマをもう少し工夫すれば、
面白い授業になるのでは」といった趣旨の意見を述べました。

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by yasuhirohashimoto | 2011-10-07 12:00 | 研究のこと

福井大学教育学部の社会科教育学担当者が日々感じること、研究のことなどを気の赴くまま記しています。


by yasuhirohashimoto