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近江兄弟社中・高等学校授業研究会(2011)。

過日、標記の件で、滋賀県近江八幡市を訪れました。

今回訪問したのは、近江兄弟社中・高等学校。
保育園から、小学校、そして、中、高校と「大きな」学園です。

http://www.ob-sch.ac.jp/

今回は、同高校教諭の植田健先生に依頼されて、植田先生
が行う高校3年生を対象とした「経済」の授業について助言・
指導を担当しました。

授業は「生活保護」に焦点を当てて、現在の「生活保護」法制の
目的とその概要、そして、法的根拠などについて確認をした上で、
「生活保護」法制を巡る様々な問題を学習していきます。たとえば、
「生活保護を巡る行政と受給者の対立」として、2007年に北九州市
で起きた福祉事務所による「水際作戦」によって、生活保護を受給でき
ない人たちが存在し、悲しい事件まで発生したこと、また、経済状況
の悪化などで、生活保護の受給者が急増していること、また、生活保護
の不正受給の問題や、生活保護と最低賃金で働いている人の収入比較を
することでわかる「ワーキングプア問題」そして生活保護を受給し続ける
感情の問題、など、多岐にわたる問題を取り上げ、最後に、生活保護法制
の問題から見える対立構造として、①受給者重視か、納税者重視か、
②生活保護重視か、自立助長重視か、があること、などを生徒は学びました。

この授業は、主として、生活保護法制の「原則」と「法制」そして、「法制の
機能(問題)」を学ぶ授業でした。このような授業構成では、「法制」のデメリット
が強調されやすく、「法制」の意義が伝わりにくいといった「弱点」があります。
また、この授業では、生活保護法制の機能として、様々な問題点を取り上げて
いますが、現在的な課題から考えて、その問題点にも「濃淡」があるように
思いますし、関連性もあると思えます。合評会では、問題点を多く取り上げすぎて
いるとのご指摘もありましたので、問題点を整理する必要があるでしょう。

また、当日参観されていた現在D大学で非常勤などをされているK先生は、
同校が、キリスト教精神を重視していることも影響していると思われるが、
「生活保護重視」の立場に生徒たちは立ちやすいのではないかといった
ご意見をもたれていました。

いずれにしても、教育内容を精選し、社会形成科や市民社会科の授業として
構成し直せば、興味深い授業になりそうです。良い素材を提供していただいた
と思っています。植田先生に多謝。

近江兄弟社中・高等学校授業研究会(2011)。_b0091443_1634101.jpg

by yasuhirohashimoto | 2011-12-10 00:00 | 研究のこと

福井大学教育学部の社会科教育学担当者が日々感じること、研究のことなどを気の赴くまま記しています。


by yasuhirohashimoto