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T君の研究授業(2014年附属小)。

過日、本学附属小学校高学年の研究授業を拝見してきました。



日本の「食糧自給率」を扱った授業。日本の「食糧自給率」を
カロリーベースで、39パーセントを強調し、このままで良いのか、
と問う授業。「食糧自給率」を過去と比較し、また、他国と比較し、
低下傾向にあること、他国(英米仏)と比較すると、日本は著しく低
いこと、などを踏まえ、このままの「食糧自給率」で日本は大丈夫な
のかを児童に考えさせる授業。

また、日本への食糧輸出を止められた事例や、日本の現在の「食糧自給率」
が低いことで、たとえば、納豆だと、どの程度しか、自給できないのかを
確認する授業。

いずれも、グラフや画像を電子黒板で示し、児童に理解させる、新時代の
授業。やはり若いと良いですね。こういった授業形式にもすぐになれる。

以前、拝見したTOSSの某先生の授業を彷彿とさせます。

この授業の流れを見てもわかるように、T君は、「食糧自給率が低いことの
問題性」をとにかく認識してもらいたい、これが念頭にあります。

授業後の反省会には参加出来ませんでしたが、概ね、アクティブに児童が
驚く資料を見せて、関心をつかませる、そういった点は評価されていたよう
です。

一方で、授業者の狙いと授業の展開がずれていたのでは、との指摘もあった
ようです。

反省会の議論をT君から聞きましたが、児童の中に、納豆の事例を取り上げて、
「これだけ自給率が低いと問題なのだから、『外国と仲良くしなければならない』」
との意見があり、これはT君の認識と違う意見があり、こういった認識を子供が持った
点は反省点だと言っていました。

ただそれは違うと思います。

食糧自給率を上げるべきか否か、といった論争問題は、簡単に解決できる問題ではなく、
複雑です。児童は、「食糧自給率を上げるべきか否かと問われた時に、この問題は、複雑
なのだ、解決するのが難しいのだ」といった認識を持つことの方が重要だと思います。

食糧自給率の問題は、食糧安全保障の観点から上げれば良いと考えるのか、そうではなく、
国際協調をしながら、比較生産費説的に考えて、国家間の「分業体制」でいくのが、価格
の問題を考えれば、ベターなのか、食の安全の問題など様々な要因が関連します。

ここまでの認識は無理としても、前述した児童の意見は、この問題を考える上で、重要な意見
です。

T君には、こういった意見をうまく拾い上げていくことの重要性について説明しました。

今回の授業は、教育実習生が行う授業としては及第点です。よく頑張ってくれたと思っています。
今後は、より質の高い、児童の社会認識を深める授業を、、これをモットーに精進して頂ければ
と思います。

(追記)
また、本日の読売新聞社説にも出ていましたが、生産額ベースの自給率は65%にのぼる
こと、日本の自給率のアップばかりを政府が考えて、日本の強みである「ブランド化され
た野菜や果物の輸出戦略」が後回しになっている、同新聞は、その問題性を指摘しています。

食料自給率 農業生産へ穀物偏重を改めよ

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20140917-OYT1T50142.html?from=ytop_ylist





by yasuhirohashimoto | 2014-09-18 00:00 | 教育のこと

福井大学教育学部の社会科教育学担当者が日々感じること、研究のことなどを気の赴くまま記しています。


by yasuhirohashimoto