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「正義の授業」。

日弁連での講演の際にも、少し触れた「正義の授業」を拝見してきました。



福井県立武生高校のI先生が数年前から取り組まれている「正義の授業」。
「噂」には聞いていたのですが、授業を拝見する機会がありました。

過日、福井県教育研究所で行った「高等学校・中学校教員対象の社会科研修会」
で小生が「幸福・正義・公正の教育」について講演した内容がどうも「発端」
のようで、この講演に「触発」されたI先生が「政治・経済」「倫理」の授業で
「正義の授業」に取り組まれているようです。

今回拝見したのは、「栄養士免許が取得出来る公立福岡女子大学への入学を希望
した男性を男性という理由で願書提出を不受理にした件」を取り上げて、「男性に
女子大への受験を認めることに賛成か否か」について考えるというもの、また、オ
ラウータンに「人権」を認めるとした南米の裁判所の判断について、「裁判所がオ
ラウータンの解放を命じたことに賛成か否か」について考えるというもの、この2つを
「お題」として取り上げて、ワークシートに賛成か反対かの意見を記入させ、班別に議
論させるというものでした。

前者は、賛成が1人、反対が31名、後者は、賛成が15名、反対が17名。前者について
は、生徒自身の中で、「きまりは絶対に守らないといけない」といった意識がどうも強く、
「反対」意見が多数提示されましたが、先生は、「賛成側」の主張もあえて作らせて、議論
をさせようとしていました。後者は、「賛成側」の理由として、「オラウータンが長年檻の中
に入れられてかわいそう」といった情緒的な理由付けが多く出されました。

I先生は、「社会的問題に対する思考・判断のきっかけ」づくりのためになさっているようです。
ですので、一つの問題を深く考えるというよりは、複数の問題をテンポ良く考え、子どもたちの
意見を表出させることを重視されています。

これは「授業観」の違いかもしれませんが、小生だったら、どうするのか。一つの問題を、
「女子大学が存在している目的」について、考えさせ、その「合理性」。今もって、それが
存在する「合理性」を問う、そもそも、女子大学が存在した歴史的背景から考えさせていた、
「ものさし」は「目的の合理性」で考えさせていたと思います。

また、子どもたちの理由付けは、前者の賛成意見の場合は、「男女平等が大切だから」といった
点に止まっていたので良いのか。

何を授業の目的にするのか、どこまで子どもたちが判断し、その判断基準を持てば良いのか、
教師の感覚で異なってきます。

「公正・正義」といった社会的諸価値を判断基準にする、といっても、判断基準の「レベル」
は多様です。

今回、小生も研究分担者として加わっている「大杉科研」は、その価値判断基準に焦点を
当てて研究するものです。今後微力ながら、少しでもより良い研究になればと考えています。






by yasuhirohashimoto | 2015-06-11 00:00 | 研究のこと

福井大学教育学部の社会科教育学担当者が日々感じること、研究のことなどを気の赴くまま記しています。


by yasuhirohashimoto