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大阪府高槻市阿武野中学校⑤

昨日、地域教育集会が開催されました。

以前にもブログに示しましたが、各学年毎(学年4クラス)に共通したテーマで同一の指導案を用いて法関連教育の「ルールづくり」の授業を2時間続きで行い、各学年・クラスの一部生徒は授業を抜けて体育館でパネルディスカッションに参加するという流れ。

■1年生:ディベート授業「中学生に携帯は絶対に必要ではない」
→肯定側と否定側に分かれ、「主張」「質問・反論」「最終弁論」を行い、肯定側から否定側に移動した人(その逆の人)に理由を発表させ、最終的な判断を子供たちに求め、その理由を問うといった構成。

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■2年生:「携帯電話のルールを考えよう!」
→携帯電話を持つことの是非について、持ちたいと望む生徒の立場、持つ必要はないと考える生徒の立場、持ちたいと望む生徒の母親(持つことに反対;携帯メールの使用が出会い系サイトなどへの接続につながる等)の立場、同生徒の父親(持つことに消極的賛成;学校からの帰り道の防犯上を考えると必要等)の立場に班のメンバーそれぞれが立って、それぞれの主張・理由を明確にし、主張を闘わせた後で、各々が自分の立場にたって、中学生に携帯電話は必要かについて考え、携帯電話を使う場合のルール(マナー)を提案する。そして自分たちが作ったルールを明確性・平等性・相当性の観点から評価するといった構成。


■3年生:「メールや掲示板・ブログについて考えよう!」
→ネットの掲示板使用によって「いじめ」を受けた子供が存在し、そのことを聞いた学校長の判断で以下のルールが提示されたといった内容。そのルールとは「自分の学校に所属する中学生全ては携帯を使ってはいけない。今後一切メールやブログ・掲示板の活用をしてはいけない。携帯を使ったり、メールの使用やブログの記入、掲示板への書き込みをしたことがわかった生徒については、いかなる場合もその理由を聞かないで、テストの点数を0点として一切進級させない」といったもの。このルールの妥当性を考える前に、メールや掲示板、ブログの良い点・悪い点を考え、また学校で起こった問題について、校長先生の立場や生徒の立場、保護者の立場から考察した後で、校長先生が提案したルールについてその問題性を理由とともに子供たちが発表し、最終的に自分たちでどのようなルールを作れば良いのかを明確性や平等性、相当性の観点から考え提案するといった構成。

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□パネルディスカッション:生徒代表・保護者代表・関西大学学生、弁護士がそれぞれの立場から、携帯電話やメールについて、そのルールやマナーについて発言するといった内容でした。

いずれの授業も予定通りに進めたのではないかと思います(2時間目の各クラスの授業はパネルディスカッションを参観していたので拝見できなかったのですが、授業展開を考えれば、指導案の最後まで済ませることができたのではと考えられます)。内容的には、2年生の携帯電話のルールは子供から提示される内容が教師が想定していたルールよりも少なかったようです(本学の学生さんから伺った話によれば)。3年生については3-3を中心に拝見しましたが、子供たちもよく考えていましたし、校長先生の作ったルールの問題性もルール適用の範囲の問題性や、ルールが遵守可能な内容なのかどうか、罰則の「平等性」の観点から分析できていました。自分たちが作ったルールがどのような内容だったのか、後日教えていただこうと思っています。パネルディスカッションも各々しっかり準備されていたと思います。

ただ、一つ一つの授業の細かい点については改善の余地がありますし、授業とパネルディスカッションの「連携」が十分とれていたのかが疑問が残ります。授業の内容をふまえつつ、パネルディスカッションが進められる必要があったと思います。また子供たちが授業で作った(見直した)ルールをパネルをふまえてさらによりよいものにするといった構成がより望ましいと思います。今回は、授業とパネルディスカッションが「ばらばら」に行われていたような印象ですね。

最後に、私の方から阿武野中学校での取り組みに感謝の意味を込めてコメントをしました。また、パネルディスカッションに参加された大阪弁護士会のF弁護士からの授業の感想が述べられました。F弁護士からは「自由権」や「平等権」とリンクされた授業(主張や問題点を考える上での「根拠」を明確にした授業)として展開可能だったのではという指摘がありました。この指摘は「社会科授業」として構成する場合重要なポイントです。

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今回の取り組みを本学の学生さん6名も参観しました。前日講義終了後から、2台の車に分乗し、高槻市内のホテルに宿泊。翌朝の集会に参加しました。また、他大学の学生さんも興味を持たれて参加されました。本学の学生さんには後日講義の中で感想を述べてもらおうかと思っています。
by yasuhirohashimoto | 2007-11-23 13:22 | 研究のこと

福井大学教育学部の社会科教育学担当者が日々感じること、研究のことなどを気の赴くまま記しています。


by yasuhirohashimoto